独学の精神

効果が出るかどうかを気にする姿勢

 「独学」と聞いて、どのような勉強方法を思い浮かべるでしょうか。多くの人は、「誰の力も借りずに、自分だけで努力して勉強すること」というようなイメージを持っているのではないでしょうか。今回ここで説明する独学とは、そのようなものではありません。
 独学とは、目的と方法を自分で決める自発的な勉強のことです。
 例えば、こんな生徒がいたとします。その生徒は、暗記のために英単語を何回も書く練習をしている時、同じアルファベットを1つずつ先に書いて、(例えば、boy,boy,boy,boy…と書くべきところを、b,b,b,b…と書いてから次にo,o,o,o…、y,y,y,y…と流れ作業式に書く)教師に叱られました。教師が叱ったのは、決してズルいからとか行儀が悪いからというだけではなく、何より効果が出ないからです。発音を無視してアルファベットを並べるだけでは、英単語が頭に入りません。つまり、この生徒は暗記のために書いているという目的を全く意識していないのです。自分の意志ではなく他人から言われたから仕方なくやる、という勉強だとこのような無意味な行動を取りがちです。
 独学の姿勢が身に付いている人は、決してこのようなことはしません。なぜなら、自分から勉強をやろうと思ってやっているので、効果が出るかどうかを常に気にしているからです。 こう書くと、なんだか難しいことのような気がするかもしれませんが、実は大して難しいことではありません。例えばサッカーが上手くなりたい人が、野球のバットを素振りしていたら、さすがにそれは無駄だと分かるでしょう。それすら考えずに無心にやり続ける人はいないと思います。勉強も同じで、「この勉強は意味があるのか?」「これで効果が出ているのか?」といった意識を常に持ちながら勉強をすればいいのです。

「独学」=「一人で勉強」という訳ではない

 繰り返しますが、独学といっても、全て一人で勉強を完結しなければいけない訳ではありません。誰かに分からない問題を質問する、勉強のやり方を相談する、知らないことを調べる、ということと独学は決して矛盾しません。
 例えば、何かのテーマで作文を書くという場面を想像してみてください。文章を書いていて、分からない言葉があれば辞書で調べると思いますが、そこで調べるのは言葉の意味や漢字だけであって、どういう文章を書くかということまで辞書で調べることはできません。文章の内容を決めるのは自分だからです。
 勉強もこれと同じです。知らない知識や解けない問題を先生に教えてもらったり、効果的な勉強方法を相談したりすることもあるでしょうが、どういう勉強をしたいのかということを決めるのは自分です。何を学びたいのか、何ができるようになりたいのかを自分の中ではっきりさせて、そのために必要な部分だけ先生に助言を求めるのです。
 そういう意識で勉強に向かうと、勉強の姿勢にはっきりと具体的な変化が起こります。例えば先生が漢字の暗記のために「10回ずつ書いて練習しなさい」と言ったとしましょう。それで覚えられれば問題ありませんが、もし10回では覚えられないと思うのであれば、自主的に回数を増やそうと考えるはずです。「先生がそう言ったから」というだけで安心するのではなく、「結果として覚えられたのか?」という意識を持つことで、このように自発的に動くことができます。これはすでに立派な独学の態度だと思います。

どんな種類の勉強でも対応できる力

 今の時代は変化のスピードが速いので、一度学べばそれだけでずっとやっていけるということはありません。学んだ知識は急速に時代遅れになり、その分新しいことをどんどん吸収していかなければなりません。その勉強内容は、それぞれの仕事や環境によって異なります。テキストやスクールなどがないような勉強もあるかもしれません。それでも、学生時代の勉強を通じて独学の精神が確立した人であれば、何を利用してどのように勉強すればいいのか自分で考えることができるので、しっかりと成果を出すことができるでしょう。